「シナリオ」営業概論 part.01
あるある? 噛み合わない経営会議
■こんな会議、経験したことはありませんか?
社長:「この半年、新規受注の数が落ち込み続けている。どうしてなのか?」
経営部長:「競合の新機能に値引きもできずに対応できません。今の数字でもよくやっています」
開発部長:「競合との機能さはそれほど出ていません。来月の新機能追加で巻き返しできます」
経理部長:「今でも利益率はギリギリなのに、これ以上値引きしたらやる意味ないですよ」
業界・業種や企業規模を問わず、こうした噛み合わない経営会議はどんな会社でも展開されているはずです。
社長は業績に最終コミットする立場ではありますが、多くの場合、各部門のリアルタイムの実態までは把握できていません。だからこそ会議をするわけです。
一方、各部門の管理職も、できる限り前向きな報告をしなければ、自分の立場が危うくなることぐらいは理解しています。
しかし、結局は課題の解決策を決めることなく、新たな重要課題を提起することもなく会議は幕を閉じてしまいました。
■どうやって打破する? よくあるモヤモヤループ
でもこれ、よくある話。
誰も問題意識が欠如しているわけではないのです。
健全な危機感があるからこそ、皆がモヤモヤを抱えている。
どこかの部署も粛々と「やるべきこと」と向き合い、仕事を進めています。このシーンが示しているのは、まさに「ゆでガエル」へと転落していく会社の光景そのもの。
このままじゃいけない、ということは皆わかっている。
なのに「何がいけないのか」「どこをどう変えればいいのか」が見えてこない。
前回の噛み合わない会議では「新機能の開発」について話していますが、結局議論は「差別化機能なのか、価格なのか」という対抗の話し合いになっています。
「絶対的な勝ちパターンはないのだから、二者択一の発想ではダメなんだ」と誰かが説得力をもって言い切ってくれれば、課題解決は前に進むのです。
しかし、みんな「正解」を一つに決め込んでしまいたい。
でもどちらか決めきれない。
こうして二者択一ゆえのモヤモヤループにはまっていくのです。
ではモヤモヤループのまま変化しない「ゆでガエル」にならず、業績回復をしていくために会社は何をすべきなのか。
例えば営業の面から考えるとどうでしょう?
■「シナリオ」が会議を変える
多様な事業を展開するお客様が増えているこの時代、そのニーズは千変万化しています。
だからこそマニュアル通りに行動しても、業績停滞を打破することは難しいのです。
しかし、「変化するニーズ」を的確に捉え、それに応じてシナリオを組み立てていくことができれば成果は見えてきます。
==============(仕切り直しの経営会議) ==============
社長:「以前とはお客さんの傾向は変わっていないの? 単価は少しずつ上がっているけど」
マーケ部:「確かに、以前は中小企業のお客さんが多かったですが、徐々に大手からの問い合わせが増えています」
営業部長:「そうですね、大手のお客さんは受注までに時間が掛かるので、それ以前よりも効率が悪くなっているかもしれません。」
社長:「お客さんに合わせて提案内容をアレンジしてる? お客様さんが変わっているなら、売り方を変えていかなくちゃ!」
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このように、お客様のニーズが変化しているのなら、それに合わせて営業の「シナリオ」も変えていかなければならない。
この当たり前の気づきがようやく会議を生産的なものに変えていきます。
そう、経営者は何も偉大な営業の神様にとして実績を自ら持っていなくても良いのです、営業に限らず、マーケティングや技術分野においても、経営者に求められ役割は視点や発想の提示、そして明確なゴール設定なのです。
■まとめ
「シナリオ」営業とは、「ゴール」からの逆算によって「お客さまを動かすステップ」を設定し、これをお客さまとのやりとりに応じて柔軟に変化させながら、「受注確度」を上げていく手法。
さて、この記事ではこれから、デジタル時代に求められるこの「シナリオ」発想での営業術をシリーズ形式で解説してきます。次回をお楽しみに!