「シナリオ」営業概論 part.10
「うまくいった」と思っているのはあなただけかも
■お客さまとの絶望的な温度差はこうして生まれる
前回に続き〈一次営業〉での失敗編04をお届けします。
一次営業を終えてさわやかな笑顔でお客さまのもとを立ち去る営業担当。
そしてそれを笑顔で見送るお客さま。
しかし、これまでに上げた「シナリオなき営業」の失敗の末、双方の思惑には絶望的な温度差が生まれているかもしれません。
私がもしも上司として同行し、彼がこのまま帰ろうとしていたら、帰り道でお説教タイムが始まるでしょう。
「いつもの『台本』通りの展開しかせず、何ひとつ進展がないまま、なぜ平気で『爽やか』に 帰れるのか」と、強く叱ります。仮に彼が「それが営業じゃないですか」などと答えたら、絶望してしまうでしょう。
■台本通りだけの営業が失敗する理由
ではゴールから逆算して作成する「シナリオ」とはいかなるものでしょうか?
ここで伝えたい「シナリオ」とはあくまでもゴールから逆算をした営業の道筋を考えることにあります。
これまで上げてきた一次営業の失敗例の共通点は、次につなげるためにお客さま自身に問題解決の可能性を感じさせなくてはならなかったのに、自分の達成感しか頭になかったことにあります。
このような「台本通りの営業」は、まずゴールの設定から誤りを抱えています。次にゴールへと到達するステップにも重大な欠落があります。
台本の実行だけをゴールにし、熱弁と一問一答で披露した情報は、いずれも「モノ」売りの口上でしかありません。
製品の営業だろうとサービスの営業だろうと、現代のお客さまが欲しがっているのはモノだけでは ありません。
それを手に入れた自分たちが価値を感じられるかどうか、という「コト」への期待もあります。
■提案に自信を持つ営業担当ほど相手を見ていない
そもそも、たいていの製品やサービスならば、自社サイトや比較サイトによる情報発信がなされています。
普通のお客さまならば、それさえ見れば「モノとしての価値」のあらましは理解できる時代です。
一方、同じような競合もいくらでもあります。営業担当の使命の一つは、それらとの違いを明らかにして、ネット上の情報では見えづらいリアルな情報を伝えること。
ところが、提案に自信を持つ営業担当ほど、それを提供せずに「やりきった感」満載のさわやかな笑顔で帰って行く。
想像してみてください。
台本の実行だけをゴールにして笑顔で立ち去る営業担当。
それを見送ったお客さまの胸の内は?
営業担当を務める者にとっては、背筋が寒くなる実態がここにあります。