「シナリオ」営業概論 part.26
〈二次営業〉での失敗編03:設定すべき「ゴール」が見えていない
■お客さまからの同じ話の繰り返しは要注意
さて、お客さまの課題解決の意識の高さのおかげで、営業担当の彼はチャンスをもらいました。前回同様に「自分が言いたいことばかり言っている」彼に、お客さまの側から改めて「私たちはこうしたい」という意向が伝えられたのです。
■お客さま:前回お話したように、赤字の理由まで分かるようにしたいのです。
□営業担当:ご説明したダッシュボードのドリルダウン機能を活用頂けるとは思います。
■お客さま:それを使って、担当者自身が分析までできるのですか?
□営業担当:分析機能は使いやすいとのご評価を頂いています。ご契約後にトレーニングも予定しています。
「前回お話したように」と言ったお客さま。このように、同じ話が繰り返された時は最大級のアラートです。これは、お客さまがあなたのことを疑っている、またはあなたが話してきたことを全く聞いていない証拠です。
そもそもお客さまがアポに応じたのは、営業担当が提供してくれる情報に期待を持ったから。既に、営業担当個人の姿勢に対しては疑念を持っているため、今回は会社としての実績に期待をしたのです。それを裏切ってしまったため、「前回お話したように」と、わざわざ軌道修正を図り始めたのです。
■最後のチャンスを逃してしまった営業担当者
しかし、どうやら彼は
「え? だから前回も話したし、今も伝えたように、この機能を使えばいいんだよ」
程度としか認識できなかったようです。
そこでお客さまの女性担当は「担当者レベルでも使えることが重要だ」と評価の基準を伝えてきました。
それに対して彼は、機能や使用方法から説明をするのではなく、「契約後にトレーニングを用意しています」として、サポートの話で逃げてしまっています。
「ウチの製品」ばかり説明してきた営業担当が、今度は製品の説明からも逃げてしまいます。もはや軌道修正は不可能ですし、チャンスを活かすこともできません。
「これほどひどい営業担当はなかなかいないよ」や「たぶん新人営業だよね」と思うかもしれませんが、ここで想定しているのは、自分を過信している営業担当です。
自分は完璧に製品の説明をして、質問にもよどみなく全て答え切ったから、お客さまもウチの製品をしっかり理解できたはずだと思い込んでいます。
もし理解できないのだとしたら、お客さまのリテラシーが足らないからだと考えているかもしれません。
■本当に逆算すべき「ゴール」を設定できている?
お客さまは、営業担当の一人舞台を見たいわけではありません。
どれほど淀みなく説明されようとも、自分が理解できなければ発注しません。
それは、お客さまが社内で説明できないからです。さらに、お客さまが期待している「コト」と異なるものを説明されても発注しません。期待からズレている製品・サービスを導入したら後が怖いからです。
この営業担当は、その場を切り抜ける回答ばかりを考えていて、お客さまの質問がゴールとどう関係するかを考えていないのです。つまり、ゴールから逆算する「シナリオ」発想ができていないのです。