「シナリオ」営業概論 part.27

〈二次営業〉での失敗編04:「コト」売り発想だけで進めても✕

「モノ」売り要素を完全になくすのもNG

「モノ」売り要素を完全になくすのもNG

ここからは、「コト」売りの発想を盲目的に信じ込み、「モノ」売りの要素を過度に排除してしまった営業担当の失敗例です。

【さらなる問いかけで話が広がる】
□営業担当:前回お話の出た費用管理は、どこまでできているのでしょうか?

■お客さま:営業部単位での毎月の予算と実績との比較は、月別にしています。

□営業担当:そこでは、顧客別での管理をできないのですか?

■お客さま:顧客別に分ける方法がないのです。経理データを使っていて、顧客データまではひもづいていないので......。

□営業担当:そもそも、顧客別の費用を誰かが管理しているのですか?

■お客さま:管理と言えるレベルかわからないですが、担当の営業はわかっています。

□営業担当:担当の営業に顧客別の費用を入力してもらう仕組みはないのでしょうか?

■お客さま:前回話した稟議時のワークフローか支払時の起票ですかね。

いい感じでヒアリングは進んでいくものの......

前に触れたように、コト売りではお客さまが起点となります。
モノ売りのシーンでは、 ダッシュボード機能の紹介一辺倒だった営業担当ですが、ここではコト売りに求められるお客さま理解を踏まえて、前回の振り返りから始めて、さらに的確な質問を軸にしてお客さまとの問答の密度を上げています。

質問を重ねることで、お客さまの当初の話の裏にある背景が見えてきています。お客さまも、次々に課題と思しき点を伝えてくれて、実に良い感じでヒアリングは進んでい
きます。

次々と出て来る課題なのか分からない話

しかし、徐々に問題が発生してきました。
「課題」に関わる注意点を、この営業担当は理解していなかったようです。

■お客さま:上司は、営業での支払いの起票時に、顧客の情報も追加で 入力してもらえと言うのですが......経理システムでは、入力 項目がなくて、改修にコストがかかるのです。

■お客さま:それで、我々が担当営業に聞いて回ってもみたのですが、あま り協力を得られなくて...

■お客さま:営業現場からすると数字を調べて教えるメリットはないから ね。みんな目の前の案件のことで精一杯だし。適当にしか 答えてくれないよ。

■お客さま:赤字顧客と目をつけられると、対応の手間が増えるだけですもんね。ただ、何とか正確な情報を引き出したいです。

□営業担当:(話同士がどうつながるのか、分からなくなってきた......汗)


お客さまは「この営業担当は私たちの不満を聞いてくれる」そう感じたのでしょう。
お客さまは次々と、しかもランダムに自社が抱える問題点を口にし始めました。ヌケモレなくお客さまの課題を引き出すという作業を進めているようにも見えますが、その実、営業担当は困惑し始めました。

お客さまの多くは、本当の課題を自覚していない

お客さまの担当者たちは、自社が抱えている課題を、すべて明快にしているとは限りません。 むしろ、彼らも日々の仕事に追われて、「いったい何が課題なのか」「何が自分たちのニーズなのか」と考えていない方たちが大半です。これが前にお伝えした「七割はウソの課題」につながります。

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