「シナリオ」営業概論 part.28

〈二次営業〉での失敗編05:「困惑」がお客さまの期待値を上げてしまう

相手の話が広がり過ぎて混乱の極致

相手の話が広がり過ぎて混乱の極致

営業担当が、こうした実態も心得たうえで課題を引き出す「問いかけ」を用意していれば展
開は変わったことでしょう。
しかし、このシーンを見ればわかるように、彼は「とにかく不満をたくさん聞き出すのがコト売り営業なのだ」という考えしか用意していませんでした。

■お客さま:ということで、色々と話してしまいましたけど、何とか改善に繋げられますでしょうか。

□営業担当:(どう提案するのか、イメージが湧かない。でも、ここで分からないとは言えないし...)

■お客さま:ツールの提案以外にも御社が他にできることの提案も期待 しています。

□営業担当:一度持ち帰って、提案資料を準備させて頂きます。

とうとう言ってしまいました。「一度持ち帰ります」の常套句。

「一度持ち帰ります」で、高まるお客さまの期待値

一方のお客さまは、「話を聞いてくれる営業」の登場を喜び、日頃から抱えていた問題点を、何ら整理しないままぶつけた時点で、「この営業担当なら解決してくれるかもしれない」と、これまた何の根拠もなく期待を膨らませています。

私に言わせれば、いったんこの段階で営業担当はお客さまの期待値をコントロールすべきでした。
「広げる」ばかりではなく、「たたむ」べきだったのです。

先のモノ売り型の時と異なり、 お客さまサイドの問題点は聞けたわけですし、このうちどこにフォーカスするかを伝えれば、お客さまは一部でも対応してくれると安心することでしょう。あとは帰社して、絞り込んだ課題 に合わせてシナリオを練り直しても良かったのです。

訪問企業の数がものを言うモノ売りと違い、コト売りでは同じお客さまを複数回訪問するのは当たり前のことでもあります。
次回に向けて、フォーカスする課題をしっかり仕切り直せば良いのです。

裏切られたお客さまの心は、もう戻らない

結局、一度持ち帰り、提案書を準備した後の訪問で、この営業担当は「対応できそうな課題」に絞り込んで話を始めました。

□営業担当:
入力方法の課題

稟議ワークフロー との連携

ダッシュボードで共有

■お客さま:(結局、そこだけ...あれだけ話をしたのに反映されてないよ。)

■お客さま:(期待した私がバカだった。 これなら他と変わらない。)


しかし、これはお客さまからすると、裏切られた気持ちです。
「あれだけウチの問題点を伝えたのに、結局この程度の解決策しか持って来れない営業担当なのか。この会社はその程度なのか。」とお客さまが感じるのは当然でしょう。

お客さまの課題やニーズを聞き出して、その場でここにフォーカスすると話していれば、こうした展開は許されると思います。
しかし、前のシーンで彼は明らかに困惑をしていたわけです。
何が課題なのかさえ掴み切れていない営業担当が、闇雲にできそうなコトの説明をし始めれば、当然のごとく、お客さま担当者の胸で膨らみ始めていた期待は跡形もなく崩れ去ります。

おわかりいただけたはずです。
モノ売りだけにこだわるのは正解ではないし、かといってコト売り路線でなんとなく上辺だけの傾聴型コミュニケーションを展開したとしても、それもまた正解ではないということを。

次回からは、こうならないために「ニーズとベネフィットのマッチング」の重要性、そし て「合わせ」と「ズラシ」という手法について解説していきます。

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