「シナリオ」営業概論 part.40
組織の「知」で進化する「シナリオ」営業
■個の成長には、組織としての「知」が必要不可欠
「シナリオ」営業概論、後半のここからは営業部門という組織における問題点の確認と組織全体で「シナリオ」営業を実践するための道筋を示していきます。
前半では、一人の営業担当の問題点ばかりを見てきましたが、そもそも特定の個人にスキル・能力がないから、受注を獲得できていないわけではないのです。
組織として、営業担当のシナリオを進化させるだけの「知」を蓄積できているかも問われるのです。
■理想の営業組織とは?
理想としての営業組織とはどのようなものでしょうか?
もともと個人の業績を見やすい営業の世界では、組織に求めることにはいろいろな形がありえます。
「見込み顧客を提供してくれる」「事務処理のサポートをしてくれる」といった冷めた期待から、「営業担当同士が切磋琢磨し、自分の売る力を伸ばしていく場」という熱い期待まで。
とはいえ、多くの企業では、個人だけでなく組織としての売る力の成長を期待されるでしょう。
営業担当の足りていないスキルを明らかにし、それを管理職が伸ばしていく手助けをする、それぞれの知見を持ち寄ってより良い提案に作り上げていく、といったあたりが営業組織としての理想像となるでしょう。
■営業組織にはコミュニケーションの土台が必要
しかし、組織としての成長という目標を共有できていたとしても、それを実現できるかは別問題です。
「自分の勝ちパターンを共有しても、他の人に共感してもらえない」、「何度も改善点を伝えていても、腹落ちしてくれない」という問題が表に出てきます。
個別に活動をすることの多い営業部門では、同じ場面を経験しているわけではないので、お互いの意図を理解し合えるコミュニケーションの土台が必要です。
それがないと前提の理解にばかり時間がかかってしまい、営業担当は嫌気がさしてしまいます。
■「共通言語」が組織を救う
営業組織としては、コミュニケーションの土台としての「共通言語」を作っていくことが重要なのです。前半で出てきた、「個人ニーズ」や「組織ニーズ」、「機能的価値」や「使用的価値」という言葉も共通言語の例です。
ひとつの共通言語で、多くの意図を伝えられるので、いちいち説明しなくても伝わり、コミュニケーションの精度・スピードが高まります。
■改善サイクルのスピードが鍵となる
精度とスピードが上がることで、個別案件での「シナリオ」の振り返りに時間を使えるようになります。
より深くまで検討できるので、シナリオの悪かった箇所を浮かびあがらせ、次への改善ポイントも見えてきます。
この改善サイクルのスピード差が、組織としての「知」の蓄積の差となってきます。
一方で共通言語のない組織は、「お客さまの予算はあるのか」、「いつ頃発注の予定なのか」、「誰が決めるのか」と、いつも同じことを繰り返し確認しています。これこそ成長を望めない「共通言語」なき営業組織なのです。