「シナリオ」営業概論 part.47
〈営業会議〉での失敗編03:お客さまを見ない営業担当はこうして生まれる
■営業プロセスを急かされて戸惑う現場社員
【 上司の指示と顧客の期待とのズレに悩む 】
□営業担当:お客さんは本当にウチに興味を持っているのかな。それで、役員アポなんて取れるのかな。でも、聞かないと課長に怒られるし、まずは聞いてみるかな。
part46で「意思決定者であるはずの役員が誰なのか聞き出せ」「予算はあるはずだから探ってこい」と営業部長に檄を飛ばされた営業担当。
しかし、実際にお客さまと対面する営業担当は戸惑うばかりです。
■新人が上司へのアリバイ作りで営業をしてしまう理由
この営業担当は、お客さまがまだこちらを向いていないことを分かっていますし、正面から役員との面談アポをお願いしても難しいという感覚を持っています。
けれども何もしなければ、次回の営業会議で管理職から雷を落とされることは目に見える、だからまずは聞いてみよう。
これではもはや自分が怒られないための「アリバイ作り」、プロの仕事とは到底呼べません。
■相手の内情を聞くのはハシタナイ?
普通の人には聞きにくいことも堂々と聞き出せるのが「一人前の営業担当の証」という話をよく聞きます。
しかし、経験の浅い営業担当たちの頭の中には常に「お客さまにここまで聞いてしまってよいのか」「お客さまを不快にさせてしまうのではないか」という恐れの感情があります。これは「相手の内情を聞くのはハシタナイ」という文化が日本人の心の中に根付いているからでしょう。
必要なことは聞くべきなので、上司やリーダーがこの「誤った常識」を外してやることは重要です。
だから新任の営業担当を先輩の営業訪問に同行させ、ロールプレイを通じて必要なことを聞き出す訓練をしている企業も多いのです。
■ギブ・アンド・テイクでの失敗
しかし、そのヒアリングが行き過ぎると、お客さまにとって不快な存在になります。
ビジネスではギブ・アンド・テイクという論理が働きます。
役立つ情報を十分に提供していないのに一方的に相手の情報だけ聞き出していれば、相手は「なぜ自分だけこんなに話をさせられているのだ」と気づいて、急にガードを上げてしまいます。
このギブ・アンド・テイクのバランスをしっかり教えないまま、お客さまの情報だけ取ってくるように伝わってしまっていることがあります。
お客さまと向き合った瞬間に、BANT を先に聞こうとする若手営業も実際にいます。
経験値の浅い若手ほど「ただの伝言係」へと陥り、お客さまの不信感が高まってしまいがちです。