「シナリオ」営業概論 part.07
〈一次営業〉での失敗編01:初回から始まる失注へのカウントダウン
■失敗ばかりの「シナリオなき営業」
これまでは「ゴールを設定し、そこから逆算発想を構築する」ことの重要性をお伝えしてきました。
ではゴールから逆算して作成する「シナリオ」とはいかなるもので、それを事前に検討して来ない営業担当に何が起こるのか?
営業担当が一次営業するシーンから露呈する「シナリオなき営業」の失敗例を【〈一次営業〉での失敗編】として、4回に渡って見ていきます。
■初対面でお客さまの話を無視!?
まずは、かんじんな初対面でお客さまの話をスルーしてしまう営業の話です。
「お客を無視なんて、するわけないでしょ!」という方もちょっと待って!
例えばこんなやりとり、してしまっていませんか?
■営業担当:今回のお問い合わせの背景は何でしょうか?
○お客様:顧客数が増えて、前のように顧客別に売上や費用を細かく把握できなくて、中には 赤字の顧客もいる気がするんです。
■営業担当:なるほど!
○お客様:顧客別にエクセル入力しているのですが、経理のデータとは一致しなくて......その突き合わせが大変なんです。
■営業担当:では、プロダクトの説明に移ります。
■問題ないように見えるやり取り、何がダメ?
このひとコマ、見ようによっては何の問題もないように映るかもしれません。
営業担当はお客さまに問合せの背景について質問をしていますし、先方もそれに返答し、その後に製品の説明に入ったのだから、批判すべき箇所などないようにも感じます。
もしもこれが単機能のウェブ会議システムを営業している場合ならば、悪くないかもしれません。
お客さまもその会議システムの「モノ」としての機能を手短に聞きたいはずです。
しかし、これが録音による議事録作成や、ホワイトボード共有機能まで付いた高度なシステムでしたらどうでしょうか?
そもそも営業担当が売ろうとしているモノには様々な機能があり、お客さまが期待しているのは「そのすべての機能」かもしれないし、「一部の機能だけでも条件次第では」と考えているかもしれません。
お客さまが求めているのはモノとしての価値ではなく、自分たちが抱えている課題を解決する、という「コト」としての価値ということを忘れてはいけません。
それなのに上記では、話を聞いた後に特に掘り下げることもなくスルーしてしまいました。
この段階で不快になるお客さまはいないと思いますが、ちょっと肩透かしを食らった感じを持つでしょう。
■単なる「台本」の読み上げになっていませんか?
売る側が「モノを納入する」ことをゴールに設定し、そこに執着した形で話を進めているようでは、買う側は「達成したいコト」というゴールへの道筋が見えてきません。
これでは、「シナリオ」ではなく、単なる「台本」の読み上げです。
シナリオ営業では、相手への「問いかけ」により柔軟に話を展開していくべきなのですが、上ではお客さまの話に構わず最初から決まった台本を話し続けています。たしかに、「相手の話にあまり乗らずに、キチンと自分達の伝えたいことを伝え切る」ということをあえて指導している企業もあります。どこにでもあるような最初のコミュニケーションのひとコマで、ここに問題 があるという意識を持っている人は少ないかも知れません。
しかし、すでにもうこの時点で初回訪問から始まる失注へのカウントダウンは始まっているのです。