「シナリオ」営業概論 part.09
〈一次営業〉での失敗編03:シナリオ営業から遠いコミュニケーション
■お客さまとの一問一答の答えがズレてしまう営業
前回に続き〈一次営業〉での失敗編03をお届けします。
いつも通りにしか聞こえない「熱い機能説明」が終わったところで、ようやくお客さまは具体的な課題を持ちだし、質問をしてくれても......、その返答までもがいつも通りの内容、というのはよくある話。
次の失敗例は、「お客さまとの一問一答の答えがズレてしまう営業」のお話です。
例えばこんな感じです。
□お客様:一通りのことができるのは、分かりました。赤字顧客の分析という点では何ができるんですか?
●営業担当:データが入っていれば、顧客別に分析することができます。
□お客様:管理担当者が自分で分析できるのですか?
●営業担当:導入企業の多くは、現場担当者が活用していますよ!
□お客様:どう使う事例が多いですか?
●営業担当:導入事例はたくさんあります。
お客さまの質問はスルーし、たった今説明したばかりの機能説明の話を繰り返したり、導入実績を誇らしげに訴えたり。
これは、常に「こういう質問が来たら、こう答えれば良い」と決め込んでおり、それを 「一問一答」で繰り返してしまうコミュニケーションの失敗例です。
■目指すべきは「先方が知りたい情報」に応えようとする姿勢
営業担当が訪問先で与えられる時間には限りがありますから、その時間内にできる限り多く の情報を伝達しようとするのは当然です。
しかし、本来一次営業で目指すべきなのは「こちらが伝えたい情報」のフル発信ではなく、「先方が知りたい情報」に応えようとする姿勢のはず。
オンリーワンの強い製品やサービスを売る営業担当だったとしても、そこは変わりません。
なぜなら、お客さまには買わないという選択肢もあるからです。
もちろん一問一答的に「何を聞かれても即座に返答できる」のは良いことですが、そのスムーズさにばかり酔いしれていても、お客さまが腹落ちしていなければ何の意味もありません。
一問一答というコミュニケーションは、結局のところ話に発展性が乏しいがために、やりとりがブツ切りで終わってしまっています。
■お客さまと本気で向き合っていますか?
なぜ発展性が乏しいのか、原因は明白。彼がお客さまと本気で向き合っていないからです。
「耳を傾ける姿勢」と「提起された課題を理解しようとする気構え」がなく、「モノ」売りの営業ばかりに気が取られ、「コト」売りとしての使命感が欠如しているからです。
さらに、決定的に不足しているのは、お客さまへの純粋な興味です。
お客さまのことを知る ために、「なぜ」「なぜ」「なぜ」をお客さまに問いかけようとしていません。「なぜ」を積み重ねた先に、お客さまの真の課題があるのです。
一問一答の中でお客さまが気づいていなかった部分まで一緒に掘り下げていくことが求められるのです。