「シナリオ」営業概論 part.38
〈二次営業〉での解決編04:プロはシナリオに沿ってズレを解消する
■失敗例と解決例の会話を比較してみよう
【 ✕ 失敗編:顧客からの反応を踏まえて軌道修正できない 】
■お客さま:前回お話したように、赤字の理由 まで分かるようにしたいのです。
□営業担当:ご説明したダッシュボードのドリルダウン機能を活用頂けるとは思います。
■お客さま:それを使って、担当者自身が分析までできるのですか?
□営業担当:分析機能は使いやすいとのご評価を頂いています。ご契約後にトレーニングも予定しています。
【 ◯ 解決編:しっかりとズレを解消 】
□営業担当:別業界ですが、顧客別での利益の一覧を社内で共有して、採算意識の徹底に成功された事例もあります。
■お客さま:じゃあ、我々もそこまで目指した方がよいですね!
□営業担当:ただ、そのお客さまも一足飛びに利益管理まで行かれたわけではないのです。
■お客さま:どういうことですか?
□営業担当:まずは、費用の管理だけからスタートされたのです。データがそろっているところから始めようという理由でした。
■お客さま:データのある範囲で、段階的に進めたということですね。たしかに、最初のステップは費用の管理かも知れないですね。
□営業担当:そこで成果を上げて、社内からデータ入力に協力してもらう雰囲気を作る形でいかがでしょうか。
■お客さま:そうしましょう。
■どうやってニーズをズラす?
解決編では「費用の管理だけでなく、その先の利益管理までできる」というお客さまの期待に合った事例を紹介しています。
しかし彼は、このお客さまがいきなりそこまで行くのは難しいと考えてます。
さてどうすれば良いのか?
答えは「どうにかして、ニーズをズラすしかない」です。
ズラシ方には、Part34にも触れたように、ニーズ自体を動かすか、前提である課題から動かすしかありません。
このシーンで用いようとするなら、「顧客別の利益比較からの気づきが重要」という課題意識まで立ち戻る必要があります。
■常に相手のニーズから考える
以前の会話を振り返ってみると、この女性担当者は、顧客別の利益管理のため経理データとのひも付けに忙殺されています。
レポートを作るたびに大変な努力をしてきたのです。
なので、利益でなく費用管理と言われて、その努力を否定されたという意識が働いているのだろうと思われます。
そこで営業担当はズラシのために、まずは、顧客別での利益の比較を実践されている事例を挙げています。
その事例から、担当者の考えているゴールは間違っていないと伝えているのです。
次に、実現ステップに話を変えています。
そもそもデータがあるのかという実現性の話をし、実務を担当している女性担当者も合点が行きました。
そして、営業担当は「課題のつながり」を問いかけたのです。
女性担当者の指摘していることは、プロセスを想定するオペレーションレイヤーでは可能だけれども、実際に実行するエグゼキューションレイヤーではムリがあることを指摘したのです。
もちろん、お客さまの側は、そんなことまで考えてもいません。
単に、この件はいま議論すべき事ではないことに気づいただけです。
■「課題レイヤー」「課題の明確度」「課題のつながり」の重要性
営業担当は、これからも同じような場面に何度も向き合うことになります。
その際に、毎回絶妙の切り返しが出来るわけではありません。
相手の話している内容を整理して、その中から体系的に切り返していく観点を持っていなくてはなりません。
そのための方法として役立つのがこれまでに話してきた「課題レイヤー」や「課題の明確度」、「課題のつながり」です。
「再現性」を担保するためには、課題・ニーズをいかに動かすのかを考えておかなくてはならないのです。
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